(共同通信配信)、2003年10月

津波警報 住民避難せず---精度上げ、信頼感高めよ(徳島新聞、2003年10月15日・「総合」面)

警報はオオカミ少年!? 予測とズレ 住民避難せず 問われる信頼回復(下野新聞、2003年10月20日・「科学と教育」面)

ほか


 2003年十勝沖地震はM8.0。日本列島を襲う地震の中でも最大級の地震だった。しかし、この地震で津波の避難勧告を受けた住民のうち、平均して6分の1の住民しか避難しなかった。

 今回の地震とほとんど同じ規模だった1952年十勝沖地震で6メートルを超える津波で大被害を被った北海道東部の厚岸町でも、わずか8%にとどまった。

 なぜ、このようなことが起きたのだろう。

 1998年5月4日、大津波警報が出た。沖縄、九州、四国、そして本州の南岸に最大2、3メートルの津波が来襲する恐れ、という警報だった。

 だが拍子抜けだった。実際に来た津波は、わずか数センチだったからだ。この例に限らず、津波の警報や注意報で警告された高さの津波が来なかったことは数多い。気象庁の津波警報は、図らずもオオカミ少年になっているのである。

 震源は石垣島南方沖でM7.7。津波で100人以上がなくなった日本海中部地震(1983年)と同じ規模だ。同じ大きさの地震が同じ場所で起きても、地震のメカニズム(地震断層の動き)が違えば津波の高さは大変に違う。

 津波警報は、出すのに時間がかかったら間に合わない。早さが命なのだ。

 震源からP波とS波という地震波が出る。P波が先に進み、S波はどんどん遅れていく。雷から音と光が同時に出るのに、音のほうが遅れていくのと同じである。

 いまの津波警報の仕組みでは、P波だけを使って計算している。S波は、震源で地震断層がどう動いたかについて大事な情報を運んでくるのだが、S波を待ってからでは間に合わないのである。

 それゆえ、地震の震源と地震の規模だけが分かった段階で「考えられる最大」の津波を想定して警報を出す。しかし地震断層の走り方によっては、実際の津波の振幅が想定の何百分の1にもなってしまうのだ。

 津波警報がオオカミ少年にならないためには、日本列島の周囲の海底に海底津波計を配置することが必要である。津波計は震源の近くで、沖合にいるときの津波の高さや波形を観測する。

 これらのデータが分かれば、発生したその津波が陸に近づくにつれてどう震幅が大きくなるかはすでに知られているから、陸を襲う津波の正確な高さが予測できることになる。

 地震予知は以前考えられいたよりもずっと難しいことが明らかになりつつある。しかし、突然の大地震による震災はともかく、地震が起きてから十数分から数時間後に襲ってくる津波の被害は、適切な予測と避難があれば、かなりの程度まで避けられるはずだ。

 行政は住民の防災意識の低さを嘆く。しかし、津波警報を信頼されるものにすることこそを心がけるべきであろう。

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