F.D.IWAKI
AED指導者養成講習会の開催について
ここで紹介する内容は、第14回全国救急隊員シンポジウムで発表したものです。
発表内容の講習会については、講習会開催時点現在つまりAHAのGuidlines 2000 for CPR and ECCに基づくものです。
※AHA:American Heart Association

第14回全国救急隊員シンポジウム
日時:2006.1.26〜27
場所:新潟市万代島 新潟コンベンションセンター「朱鷺メッセ」

このページの内容は「第14回全国救急隊員シンポジウム」の際、発表したものです。 イメージ

皆さんの地域では、一般市民に対するAEDの使用を含めた応急手当講習をどのように実施していますか?

 福島県では、一般市民に対するAED講習を県下統一した内容で効果的に行うことを目的に、福島県の主催、福島ACLS協会の共催で「AED指導者養成講習会」を開催しました。
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 この講習会は、昨年4月から6月にかけて計6回、福島県内の全救急救命士を対象に実施しました。
 これに先立ち1月には医師と救急救命士を対象に同様の講習会を1回実施しています。

 講習内容は、スキル確認としてAHA ハートセーバーAEDコース、指導技法としてAHA BLSインストラクターコースの一部抜粋という形で行われました。
 ハートセーバーAEDコースとは、AHAの教育プログラムの中でも一般市民向けの成人に対するCPRとAEDを中心としたコースですが、現在私たちが実施している応急手当講習の基になったものであることはみなさんすでにご承知ですね。
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 指導者はAHA BLSインストラクターが担当し、私も指導に参加させていただきました。
 この講習会で県内の救急救命士222名中191名、応急手当指導員9名、医師18名の計218名が講習を修了しています。
 その他として、この講習会をきっかけに、一般市民のためのAED講習用視聴覚教材(DVD)を作製し、県内の全消防本部に配布しています。
 このDVDについては、統一的かつ効果的に講習会を実施するために視聴覚教材が有効との報告があること、また受講者からの要望があったことから、福島県と福島ACLS協会の企画、監修で作製しました。
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 AHAのコースではコースの質の向上を目的に、受講者に対してアンケート調査を実施していますが、今回の講習会でも同様のアンケート調査を実施しました。

 その中で、これはスキル確認の部分についてですがCPR、AED、気道異物について、それぞれ「受講生のレベルに合っていたか」「目標に到達したか」「プレゼンテーションの質」の3つの項目について調査を実施したところ、どの項目でも95%以上が「良い」または「まあまあ良い」という評価であり、日頃から一般市民に対する応急手当講習会を実施している受講者のみなさんにも満足していただける内容であったことがわかります。

 この中で気道異物に対する処置の部分が他よりも「良い」という評価が若干少なめであることがわかります。

 これはハートセーバーAEDコースでは異物除去が、意識がある場合のハイムリック法のみで、意識がなくなったら、通報から始まる心肺蘇生法に移行すると説明しており、側胸下部圧迫法や背部叩打法が紹介されていないことが原因のひとつであるように思います。
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考察です。
 
 今回の講習会の指導に携わり、AHAのコースに参加しているBLSインストラクターとして、また一般市民に応急手当を指導してきた救急救命士として、両方の立場から今回の講習会を考察してみました。

 この講習会の受講者は、ほとんどが救急救命士です。
 すでにこれまで一般市民に対して心肺蘇生法を指導してきており、心肺蘇生法に関しては熟知しているはずです。

 その救急救命士の皆さんが、AHA HSAEDコースを受講した後のアンケートで、自分たちのレベルに合っている、講習の目標に到達したと回答しているのはどうしてでしょう。

 この点に注目してみました。
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 先ほども述べたとおり、スキル確認の部分はAHA HSAEDコースです。
 このAHAの教育プログラムはコアスキルに重点を置いた内容になっています。

 私たちがこれまで実施してきた応急手当講習会を思い出してください。

 たとえば、意識の確認で、
◇ 倒れている人の額に手を当て、もう一方の手で肩を叩き、刺激しながら呼びかけて反応を見ます。
◇ 始めは小さな声で、徐々に大きく3回呼びかけてみましょう。
 と言った方法で指導していませんでしたか?

 今回の受講者の手技を見ると、この方法で意識を確認している方がほとんどでした。
 額に手を当てる理由を聞いてみると、「それは体温を感じるためです。」というのが皆さんの答えでした。
 体温が冷たかったら、次に行う処置が変わるのでしょうか?
 何も変わりません。「反応が無い場合は119番に通報しAEDをGETする。」です。

決して額に手を当てる方法が悪いと言うのではありません。
 私たち救急隊員が、隊の活動として、または操法として額に手を当て意識を確認するのもいいでしょう。
 観察のひとつとして額で体温を感じることも必要なのかもしれません。
 しかし、一般の市民にこの手技が必要なのでしょうか?
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 すでにみなさんお気づきと思いますが、実は先ほどのイラストは、応急手当講習テキストのイラストでした。

 上の図はAED追補版のイラストです。
 額に手を置いてはいません。
 文章では「傷病者の耳元で声をかけながら肩を軽く叩き、反応があるかないか確認する。」とだけ書かれています。
 これは、まさしく下の図のとおりAHA BLSもしくはHSAEDのテキストの内容どおりです。

 一般の市民が、目の前で倒れている人を発見した場合、額に手を当て反応を確認するでしょうか?
 肩を叩いたり軽くゆすったりして確認する方が、はるかに自然な方法であり、一般市民にとっては覚えやすいのではないでしょうか。

実は最初に示した応急手当講習テキストも、「額に手を当て反応を見る」とは書かれていません。
 イラストがそうなっていたために「額に手を当て」と指導していたのではないでしょうか?

 見た目の美しさを追求し、重要ではない部分にこだわっていたような気がします。
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 つぎに呼吸の確認です。
 気道を確保した後、傷病者の口元に耳と頬を近づけ
 「見て」「聞いて」「感じて」1・2・3・4・5・6
 と、声に出して確認してくださいと指導していませんか?

 これも受講者のほとんどがこの方法でカウントしながら呼吸の確認をしていました。
 呼吸確認の目的は、文字通り呼吸を確認することにあります。
 傷病者の胸の動きを「見て」
 呼吸の音を「聞いて」
 空気の流れを「感じて」
 10秒以内に呼吸をしているか、していないか確認しなくてはいけません。

 「している」か、「していない」か、よくわからない呼吸を確認するわけですから、じっと静かに確認した方が確認しやすいのではないでしょうか。

これも、カウントしてはいけないということではありません。
 問題は、きちんと呼吸を確認しているかどうかということにあります。

 この他にもいくつかありますが、コアスキルに重点を置いた指導とはこういうことであり、本当は何も難しくない心肺蘇生法を重要な部分にのみ単純化して指導し、簡単だと感じてもらうことが一般市民に対しては効果的なのではないでしょうか。
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 まとめです。
 応急手当講習の目的は、受講者が応急手当の知識、スキルを習得し、実行する意欲をもち、またそれらを長期間維持してくれることにあります。
 効果的な講習を行うためには、
 重要な部分・コアスキルを中心に指導すること。
 そのコアスキルがぼやけてしまわないように、多くを教えすぎないこと。
 「知っていることを全部教えてやった」的な指導者主体の講習会ではなく、「習得しやすいように」「維持しやすいように」と、常に受講者の立場にたった受講者主体の講習会であることが必要です。

 今回のAED指導者養成講習会では、終始この指導方法や考え方を理解していただけるよう指導しました。
 そうすることで今後ガイドラインが変わっても、対応可能な講習内容であったと思います。
 このことが、心肺蘇生法を熟知し、これまで一般市民に対する講習会を実際に行ってきた救急救命士の皆さんにも満足していただける結果となったのではないでしょうか。 

 この講習会が有効であったかどうかについては、今後のバイスタンダーCPR実施率や社会復帰率で判断せざるを得ません。
 しかし、アンケートの結果から判断すれば、有効であったということができるのではないでしょうか。
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 最後に、福島県では同様の講習会を今も継続して実施しています。

 対象者を救急救命士からU課程、標準課程の応急手当指導員に拡大し、会場もそれまでは県消防学校で実施していましたが、皆さんが受講しやすいよう県内各地域に移動し開催しています。

 また、指導者は今回と同様AHA BLSインストラクターが担当していますが、スキル部分についてはHSAEDコースではなく、市民に対する講習会用に作製したDVDを使用して行うなど更に実践に近い講習会となっています。

 今後このような講習会を継続的に開催し、全応急手当指導員が指導技術を磨くことで市民がしっかりとした応急手当を身につけ、社会復帰率が向上することを望みます。
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