48.

「撃て!ネオ麦、ありったけだ!」

酒鬼薔薇が叫び、叫ばれなくても、ネオ麦茶はデッキに出た。
ウージーの引き金を思い切り絞り、フルオート射撃する。麻原のボートは目まぐるしくジグザグ走行を繰り返す上、ネオ麦茶らを乗せたボートもジグザグ走行するため、照準が定まらない。多くの弾が波に吸い込まれる内の何発かが船体を捉え、フロントガラスの端に命中した。続いて端から中央へと、銃弾の列が走る。ガラスが粉々に砕け散った。操縦席には麻原の姿はなかった。

   ―ついに! ―やったのか!?

途端、傷だらけの船首の向こう、操縦席に、びっくり人形のように下から麻原の上半身が現れた―!!
反射的にネオ麦茶はウージーを構えるが、ウージーの撃発機構はガチッと音を立てるだけだった。すぐさまウージーを投げ出し、ズボンに差していたCz75を抜き出し、撃った。弾が切れた。ブローニングを抜き出して撃つ。弾が切れた。

麻原のボートはものともせずに、ピッタリ後ろにくっ付いている。麻原がイングラムを構える。皮肉にも、ネオ麦茶がフロントガラスを粉砕したことで、麻原に撃ちやすい状況を作ってしまったのだ。
デッキから屋根に覆われた客席に戻ろうとすれば、後ろから背中を撃ち抜かれるだろう。

逃げ場がない―!絶体絶命―!
麻原が次の瞬間にも引き金を引くだろうと思ったその時―!!!

先ほど遠方に見えた1隻の船舶が、2隻のモーターボートの間に猛スピードで割り込んできて、そのはずみに麻原は体勢を崩す。船舶は漁船のようでもある。船の名前なのか『長漁3705』と書かれているが、全くと言っていいくらい漁具を積んでいない。

何故こんなプログラム海上近くに―? しかも、猛スピードで・・・?

謎の船舶は、3人を乗せたモーターボートの右横を通り抜け追い越していった。

「あれは一体何だ!?」

ネオ麦茶は呆気にとられている。

「ネオ麦!構うな!!」
酒鬼薔薇が叫ぶ。

しかし、今度は後方からおよそ20隻くらいの船舶と、10機ほどのヘリコプターが迫って来ていた。船体には『海上保安庁』と書かれている。海の警察だ。20隻余りの船は2隻のボートの間や外側をすり抜けるようにして次々と追い抜いていく。 どうやら謎の船舶≠追っているようだった。

「ネオ麦さん!これを!」

愛がウージーを差し出す。

ネオ麦茶が謎の船舶≠ニ海上保安庁の追跡劇に見とれている間、愛がウージーに予備マガジンを装填してくれていたのだ。続けて愛はCz75とブローニングにも弾を装填し始める。ネオ麦茶がウージーを撃つ!
絶好の攻撃チャンスを失った麻原は、一旦離れ、今度は3人が乗ったボートの左側へ、沖合いから円を描くように大きく回り込み、ボートの船首と船首を突き合せるように接近する。

操縦席の酒鬼薔薇を狙う気だ―!

麻原の接近に気付いた酒鬼薔薇は、舵を左に切ってボートを接触させようとするが、麻原のボートはすいっと左へよけて難なくかわし、左斜め前方にボートを走らせる。

ぱらららららららー!!

麻原のイングラムで酒鬼薔薇の目の前のフロントガラスが砕かれる。酒鬼薔薇は身をかがめたが、何発かが腕をかすめたようだ。酒鬼薔薇の表情が苦痛に歪む。再び舵を左に切り、麻原のボート船尾に接触させようとするが、いとも簡単にかわされてしまう。
勝ち誇ったように麻原が再びイングラムの照準を操縦席に合わせた時、ネオ麦茶が操縦席へ飛び出し、ウージーを放つ!麻原のボートは一旦離れる。酒鬼薔薇に目をやると、左腕から出血していた。ガラスの破片のせいか、顔も切ったようである。 おのれーーー!!

「ネオ麦!いいから弾がなくなるまで撃ち続けろ!ヤツに撃たせるな!」

ウージーを構えて窓の外を見ると、視界に麻原のボートが入らない!
どこだ―?後ろか―?前か―?

「ネオ麦さん!!」



 

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